ご存じの通り、10月2日に行われた今年のスプリンターズステークス(以下スプリンターズS)において、最後の直線走路でラッキーナインの走路がパドトロワが内側に寄ることによって狭くなったのではないか、という事案について審議対象となった。審議の結論は、進路妨害には当たらないと判断され、入線順位通りの着順となった。
という説明がなされた。
しかし、実際に最後の直線を真正面から写したパトロールビデオを見る限り、直線を向いた時点で十分な間隔がないどころか、明らかに2頭分ほどパドトロワの内側がぽっかりと空いているように見える。だからこそ、ラッキーナインのプレブル騎手はこのスペースを狙って、入って来たのだ。その後、パドトロワが内側によれて、ラッキーナインに接触した。
パドトロワの後を追走していたラッキーナインがパドトロワに接触したということは、ラッキーナインの脚色がパドトロワの脚色よりも良く、馬体を併せにかかっていたということである。つまり、このアクシデントがなければラッキーナインがパドトロワに先着していた可能性が高いと考えられるのである。鞍上のプレブル騎手も、レース後「あの不利がなければ2着はあった」とコメントしている。これら一連の情報から判断する限り、JRAの「もともと内柵と3番の間には1番が進路を取る十分な間隔がなかった」という説明は適当ではなく、パドトロワが進路妨害、降着とならない理由になっていないように思える。
GⅠでの降着で記憶に新しいのは、昨年のジャパンカップ(以下JC)におけるブエナビスタの降着である。このレースではブエナビスタが外から内に切れ込んでローズキングダムの進路を妨害したとして、2着に降着。ローズキングダムが繰り上がり優勝となった。しかし、この時は小生から見るとローズキングダムよりもブエナビスタの脚色の方が良く、だからこそローズキングダムの前に出ることができたように見えた。だがこの時のJRAの判断は「クロ」。おそらく進路妨害がなくともブエナビスタが先着したのではないかと思われるものの、不利がなければローズキングダムが先着する可能性はあった、という判断がなされたのではないかと想像している。
個人的には昨年のJCの降着は他国の基準よりもやや過度に厳しい判断であったと考えている。しかし、主催者であるJRAが日本ではそのようなルールだというのであれば、これは外国馬、外国人騎手とて当然従わなければならない。一定のルールがあって、全員それに従うことにより、初めて公正なレースが成り立つからである。
しかし、一方でその判断基準にぶれがあってはならない。国際的な基準より厳しかろうが甘かろうが、以前「クロ」と判定したのと同程度かそれ以上の進路妨害があったのであれば、やはり「クロ」と判定されなければならない。昨年のJCでのブエナビスタよりも、今回のスプリンターズSのパドトロワの方が、より被害馬に大きい不利を与えたのであれば。これは「クロ」と判定されなければならないのである。この点、小生の見る限り今年のスプリンターズSの方が被害馬の着順に与えた影響は大きいのではないかと思う。従って、昨年のJCでのブエナビスタが降着となるのであれば、今年のスプリンターズSのパドトロワも降着処分にすべきなのではないだろうか。
もしそうではないというのであれば、JRAはその理由を詳細に説明する責任があると思う。少なくとも現状の説明だけではラッキーナイン陣営は納得できないだろうし、また同様にファンも納得できない。仮にレース直後には詳細な説明ができないのであれば、全レース終了後でも、次の日に説明するのでも良い。このようなことが繰り返されれば、外国馬が日本のレースに挑むことを躊躇して盛り上がらない国際レースが増え、その結果ファンも離れてしまうのではないだろうか。